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コロナウイルス抗体の定量的検査について
コロナウイルス抗体の定量的検査について
2020年5月18日
一般財団法人村上財団
現在6施設(東京大学医学部附属病院・東京大学先端科学研究センター・慶應義塾大学病院・大阪大学医学部付属病院・東京都総合医学研究所・京都府立医科大学附属病院)において新型コロナウイルス抗体検査機の設置を進めており、内3台(東京大学医学部附属病院・東京都総合医学研究所・京都府立医科大学附属病院)は、特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンを通じた一般財団法人村上財団の寄贈によるものとなっております。本抗体検査機の活用について以下の通りです。
【1】抗体検査機使用による目的
抗体検査機を用い、新型コロナウイルスの血液内の抗体量について精密に時系列的かつ定量的なデータを採取することを目的とする。抗体検査の取り組みはまだ始まったばかりだが、このような調査を繰り返すことで、過去に感染した人がどれだけいるかを算出でき、ワクチン接種が必要な人数や、次の流行で感染する可能性がある人数の推計につながると期待。
【2】検査機について
- 抗体検査機は、新型コロナウイルスに対する2つの抗体であるIgMとIgGの2種類を用いて検査する。
- 抗体検査はPCR検査に比べて作業負荷が低い。PCRはDNA操作が必要だが、抗体検査は血液を機械にかけるだけである。
- 抗体検査機の処理能力は高く、1台当たり約400~500件/日(⇒1万件/月)。
- 本抗体検査機の強みは抗体値が定量化されること。
- 抗体検査簡易キットは精度面もさることながら判別できるのが有無のみであるため、疫学的な大規模調査にはむかない。
- 本抗体検査機は他機械と比較すると定量的なデータを取得でき全自動で処理能力が高い。
【3】現時点までの抗体検査機による進捗および最新情報
- 抗体検査機の精度を確かめるテストを実施した。本来IgMが早期に立ち上がり、遅れてIgGが立ち上がるが、新型コロナウイルスではIgGが早期に立ち上がり、IgMが遅れて立ち上がることが判明した。武漢における抗体検査でも同様の結果が見られ、既に世界では同様の見解の論文が2本公開されている。またIgGはPCR陽性検体において発症後2週間以内に100%陽性化することが判明した。
- IgMが早期に高値で検出される場合には、新型コロナウイルスの重症化がみられることが判明した。これにより診療現場では抗体検査機を、重軽症を測る治療目的に活用できる。
- 5月14日には東京大学病院が民間の検査会社(株式会社LSIメディエンス)から一般的な健康診断など、コロナとは無関係の目的で採られたが使用することなく残っていた500体の血液サンプルの提供を受け、抗体検査を実施した。
5月15日のオンライン記者会見(主催:東京大学先端科学技術研究センター:https://live2.nicovideo.jp/watch/lv325951721)では、この検査機を活用した抗体検査の結果(経過)が発表され、「500 体の検査の内、3体の抗体陽性結果が見られた。これを都内における感染者の陽性率と当てはめると0.6%」という数字が示され、これまでに判明した都内感染者5,000人の16倍にあたる80,000人程度が感染者の可能性があると報告された。
【4】今後の検査及び対処方針
- 村上財団から5,000テスト分の抗体検査機の試薬を、抗体検査機を保有する東京大学病院等に寄贈し、5月19日から本試薬を活用し抗体検査を行う。
- 今後は6施設が保有する抗体検査機(1台500検査可能/日)を活用し、日本国内における新型コロナウイルスの感染状況の傾向を把握する。また東京都の小池都知事が5月12日記者会見で表明された通り、都立病院などで採取した検体を使って、東京都医学総合研究所では、6月から月3,000件規模で検査を行う。
- 抗体検査機によるIgG陽性者の抗体値データを退院などの判断材料とする。
- 退院基準の判定に活用していたPCR検査を新規感染者の把握に活用し、全国で徹底的なPCR検査を行うことを働きかける。
- 抗体値陽性者については、追跡を行い、血液中の抗体が本当にウイルスに対して免疫(無毒化する力)があるのか判断する。
- PCR検査で新型コロナウイルス陽性と判明した患者は、徹底的な隔離を行い、ウイルスを封じ込め、経済活動の再開を急ぐことを働きかける。